公証事務
9-5電子公証
Q1. 電子公証制度とは、何ですか?
電子公証制度とは
- 現在、社会生活をおくる上で、紙に書かれた文書だけでなく、文書をパソコン等で利用できるPDFファイル等の電子データ(電子文書)が重要になっています。公証人は、紙に書かれた文書だけでなく、電子データについても作成者を証明する「認証」や、その文書データがある時点で存在したことを証明する「確定日付(日付情報)の付与」を行うことができます。
例えば、会社設立の際に必要な定款の認証についても、定款の文書を記録したPDFファイルに対して認証することができます(この場合、紙の定款の認証の際に必要な印紙税(4万円)が不要になります。)。 - 認証した電子文書は20年間、電子確定日付に関するデータは50年間保存します。
請求により保存された認証を受けた電子文書または確定日付が付与された電子文書(日付情報)については、その後の請求により、電子文書と同一である旨の書面の交付による証明書の発行(同一情報の提供)を受けることができます。
また、認証された電子文書または確定日付が付与された電子文書(日付情報)が、真正である(改ざんされてない。)ことの証明(情報の同一性に関する証明)を受けることもできます。 - 電子公証は、法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」を使って行われます。
嘱託人と指定公証人がやり取りする電子情報は、SSLによって暗号化され、第三者による改ざんや盗み見を防止し、安心かつ安全なサービスを実現しています。 - 電子公証制度については、法務省民事局のホームページに解説記事「『平成19年4月1日以降ご利用になる方のための公証制度に基礎を置く電子公証制度』について」がありますので、ご参照ください。
Q2. 電子公証を利用する手順を教えてください。
- 電子公証の手順は、次のとおりです。
- 嘱託・請求先の公証役場の担当者等との事前の打合せをします。
- 電子公証を受ける電子文書を作成し、電子署名をします(電子確定日付の付与の場合には、電子文書に電子署名や署名、記名押印がなくても差し支えありません。)。
- 法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」により、(2)の電子文書を添付ファイルとして、電子公証のオンライン申請をします。
- 公証人が、公証役場の電子公証システムに送られてきた(2)の電子文書に電子公証を行います。
- 嘱託人(請求者)において、電子公証された嘱託または請求した電子文書等を受け取ります。
- それぞれについて、説明していきます。
- 嘱託・請求先の公証役場の担当者等との事前の打合せ
電子公証制度を利用して嘱託・請求をするときは、必ず事前に嘱託・請求先の公証役場に電話をするなどして、担当者と事前の打合せをしてください。
ひとたび電子署名をした電子文書は、その字句の訂正・変更はできません。インターネット経由で公証役場へ送った電子署名済みの電子文書に字句の訂正・変更の必要が生じた場合には、元文書を訂正・変更した上で、改めて電子署名を行い再度インターネットで送らなければなりませんので、手間と時間を要します。必ず事前の打合せをしてください。
特に、定款認証については、内容に不備があると、設立登記ができなくなるおそれがありますので、申請前に指名する公証人と連絡を取っていただき、定款の内容等について、公証人の事前審査を受けてください。手数料支払方法についてのご案内もいたします。 - 電子文書の作成と電子署名
- 認証の対象となる電子文書は、PDF形式で保存されたものに限られます。電子確定日付の付与は、TXT形式、PDF形式またはXML形式が使用できます。
- 電子文書は、10メガバイト以下のものに限られます。ファイル名(件名)は、全角の場合には15文字以内、半角の場合には31文字以内に納めてください。また、ファイル名に使用できる文字種は、全角および半角の英数字および各種記号(一部使えない記号があります。)、カタカナ、ひらがな、ならびにJIS第1および第2水準の漢字です。
- 電子文書に電子署名をするには、Adobe Systems 社の市販ソフトウェア「Adobe Acrobat(Standard または Professional)」その他のソフトウェアを使用してください。また、電子証明書を読み取るために、カードリーダーが必要になります。
- 電子公証で使用できる電子証明書は、次のとおりです。
- ア 「商業登記に基づく電子証明書」(電子認証制度を運営する電子認証登記所)
(注)株式会社リーガル/日本電子認証株式会社が提供する法人認証カードサービスに係るICカード格納型電子証明書も利用できます。 - イ 「公的個人認証サービス」(地方公共団体情報システム機構)
- ウ 「セコムパスポートfor G-ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
- エ 「電子認証サービス(e-Probatio PS2)」(株式会社NTTネオメイト)
- ア 「商業登記に基づく電子証明書」(電子認証制度を運営する電子認証登記所)
- 嘱託・請求先の公証役場の担当者等との事前の打合せ
- 登記・供託オンライン申請システム」による電子公証のオンライン申請
「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、事前の打合せをした指定公証人を指名して、嘱託・請求をしてください。
なお、平成30年11月30日から、株式会社、一般社団法人および一般財団法人については、嘱託人の氏名のほか、実質的支配者となるべき者の「氏名」および「読み(カナ)」を入力しなければなりません。詳しくは、「実質的支配者となるべき者の申告制度」をご覧ください。 - 公証人による電子公証
- ウェブ会議を利用する電子認証の場合
- ア ウェブ会議を利用して電子定款および電子私署証書の認証を受ける場合には、嘱託人またはその代理人が公証役場にお越しいただく必要はありません。
- イ 公証人は、ウェブ会議により、電子定款または電子私署証書にされた電子署名が嘱託人本人によってされたものであることを確認するとともに、嘱託人の本人確認を行うことによって、電子定款および電子私署証書の認証を行います。
なお、定款作成代理人が嘱託する場合には、嘱託人から、事前に、公証役場に対し、発起人等の定款作成代理人に対する電子委任状(電子署名付きのもの)のオンライン送信をするか、または紙の委任状(印鑑登録証明書付きのもの)を郵送していただくことが必要です。
- ウェブ会議を利用しない電子認証の場合
- ア ウェブ会議を利用しないで電子定款および電子私署証書の認証を受ける場合には、嘱託人またはその代理人が公証役場にお越しいただくことが必要になります。
- イ その際に、ご持参いただくものは、次のとおりです。
- (ア) 認証した電子文書のデータを保存するための電子媒体(フロッピーディスクもしくはCD-R、CD-RW、DVD-R または USB メモリ。なお、未使用のものか、ウイルス感染等がないことを必ず確認してください。)
- (イ) 電子署名をされた方以外の方が公証役場にお越しになる場合には、
(a)電子署名をされた方の実印を押捺した委任状、または(b)電子文書に署名された方の電子署名のある電子委任状
(a)の場合には、電子署名をされた方が個人(自然人)のときは3か月以内に発行された当該個人の印鑑登録証明書が必要であり、電子署名をされた方が法人のときは3か月以内に発行された当該法人の登記事項証明書および代表者の印鑑証明書が必要です。(b)の場合には、嘱託人から公証人に電子メール等で電子委任状をご送付ください。 - (ウ) 定款の電子認証の場合で、定款作成代理人が電子署名をしている場合には、発起人等の定款作成代理人に対する委任状(実印を押捺したもの)
この場合、委任状には、定款本文を印刷したものを添付してください。また、この場合には、発起人等が個人(自然人)のときは3か月以内に発行された当該個人の印鑑登録証明書が必要であり、発起人等が法人のときは3か月以内に発行された当該法人の登記事項証明書および代表者の印鑑証明書が必要です。 - (エ) 公証役場にお越しになる方の本人確認資料として、(a)官公署発行の顔写真付き身分証明書、または(b)印鑑登録証明書(発行3か月以内のもの)および実印
- 電子確定日付の付与の場合
- (ア) 電子文書に電子確定日付の付与を受ける場合には、その請求者は、公証役場にお越しいただく必要はありません。ただし、必ず請求先の公証役場の担当者等に事前に連絡をしてください。
- (イ) 請求者が「登記・供託オンライン申請システム」により、公証役場に電子文書のオンライン送信をして、電子確定日付の付与を請求すれば、公証人が電子確定日付(日付情報)の付与します。
- (ウ) なお、電子確定日付の付与は、管轄がなく、全国どこの公証役場でも取り扱うことができることから、地方の6公証役場を電子確定日付センターに指定し、企業や個人が一度に多数の電子確定日付の付与を必要とする場合に、電子確定日付センターでこれを迅速かつ集中的に処理することができる体制を整備していますので、是非ご活用ください。詳しくは、「電子確定日付センター」をご覧ください。
- ウェブ会議を利用する電子認証の場合
- 電子公証を受けた嘱託・請求をした電子文書等の受取
- ウェブ会議を利用する電子認証の場合
ウェブ会議を利用して電子認証を行った場合には、「登記・供託オンライン申請システム」を介して、認証済みの電子定款または電子私署証書のデータを嘱託人に送信します。
そして、認証後、返信用のレターパックには、申告受理および認証証明書(定款認証の場合)を同封するほか、嘱託人の請求により、同一の情報の提供の書面も同封して、嘱託人に送付します。また、嘱託人から希望があれば、郵送された電子媒体に認証済みの電子文書を格納して、返信用のレターパックに同封してお渡しすることも可能です。 - ウェブ会議を利用しない電子認証の場合
ウェブ会議を利用しないで電子認証を行った場合には、持参された電子媒体に、認証済みの電子定款または電子私署証書のデータを格納して、公証役場に来られた嘱託人またはその代理人に交付します。
その際、申告受理および認証証明書(定款認証の場合)を交付するほか、嘱託人の請求により、同一の情報の提供の書面も交付します。 - 電子確定日付の付与の場合
公証人が、電子文書に電子確定日付を付与した場合には、「登記・供託オンライン申請システム」を介して、電子確定日付の付与された電子文書のデータが請求者に送信されることになります。
- ウェブ会議を利用する電子認証の場合
Q3. 電子公証の手数料は、どうなっていますか?
手数料は、公証人手数料令により、次のように定められています。
<日付情報の付与> ⇒ 700円
<電磁的記録の認証>
- 私署証書の認証 ⇒ 11,000円(原則)
- 定款の認証
- ア 株式会社または特定目的会社の定款認証
- 資本金の額等が 100 万円未満である場合は「3万円」(手数料令 35 条 1 号)
- 資本金の額等が 100 万円以上 300 万円未満である場合は「4万円」(同条 2 号)
- 前二号に掲げる場合以外の場合は「5万円」(同条 3 号)
定款に資本金の額等が記載されていない場合には、「設立に際して出資される財産の価額」が基準になります。
「設立に際して出資される財産の最低額」を記載している場合には、手数料令 35 条1号および2号のいずれにも該当しないので、同条3号の「前二号に掲げる場合以外の場合」に該当することになり、「5万円」の手数料額となります。
- イ 一般社団法人、一般財団法人、各種法人の定款認証 ⇒ 5万円(手数料令35 条3号)
<電磁的記録の保存> ⇒ 300円
<情報の同一性に関する証明> ⇒ 700円
<同一の情報の提供> ⇒ 700円(書面による交付の場合は、1枚につき20円を加算)
- ア 株式会社または特定目的会社の定款認証
なお、手数料の予納が必要になる場合がありますので、必ず、請求される公証役場へ事前にご連絡ください。
Q4. 電子公証制度利用上の注意事項があれば教えてください。
- 法務局に認証済みの定款を提出して会社登記をする場合は、電子文書の形で受け付けてもらえますが、近時、銀行等の金融機関では紙ベースの定款を求める運用もなされているようです。そこで、謄本を請求する場合(同一の情報の提供)は必ず書面で交付を受けてください。
- 電子公証システムの事務取扱時間は、月曜日から金曜日(国民の祝日・休日、12月 29日から1月3日の年末年始を除く。)の8:30から17:00となっております。
ただし、17:00でシステムは稼働を停止しますので、終業時間間際に申請された案件は、当日中に処理できない場合があります。 - Internet Explorerのプラウザ以外でxmlファイル形式の公文書ファイルを開く方法については、以下のリンクを参照してください。
- 電子定款や電子確定日付に付された公証人の電子署名の有効性を確認する方法については、次のPDFを参照してください。
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