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公証事務

9-3
宣誓認証

宣誓認証制度

Q1. 宣誓認証とは、どういう制度ですか?

   宣誓認証制度は、公証人法58条ノ2に定められた制度です。公証人が私署証書(作成者の署名、署名押印または記名押印のある私文書のこと)に認証を与える場合において、当事者が公証人の面前で証書の記載が真実であることを宣誓した上、証書に署名もしくは押印し、または証書の署名もしくは押印が自らしたものであることを認めたときは、その旨を記載して認証する制度です。この宣誓認証を受けた文書を「宣誓供述書」といいます。
   以上のとおり、宣誓認証とは、公証人が、私文書について、それが作成者の真意に基づいて作成されたこと(作成の真正)を認証するとともに、制裁(虚偽宣誓をしたときは10万円以下の過料)の裏付けのある宣誓によって、その記載内容が真実、正確であることを作成者が表明した事実をも公証するものです。

Q2. 宣誓認証制度は、何のための制度ですか?

   第1には、民事訴訟の実務において、訴訟促進の観点から利用されている当事者または第三者の供述を記載した陳述書等の正確性を担保するための手段として、制裁の裏付けのある宣誓認証によって、証拠を保全し、適正かつ迅速な裁判に役立てることを目的としています。
   第2には、私署証書の内容が真実であることを当事者が宣誓し、そのことを公証人が認証した証書の提出を、外国の官庁、会社等から求められることがあり、そのような要請にも対応するためです(この第2の点については、「外国文認証」の項を参照してください)。

宣誓認証の利用場面

Q3. 宣誓認証は、具体的にはどのようなことに利用できますか?

   次のような場合に、利用することが想定されています。

  1.    官庁や会社から陳述書等の提出が求められた場合
  2.    契約をめぐるトラブルに備えて、契約書作成の際に、当該契約の背景事情について記録を残す場合
  3.    推定相続人の廃除の遺言をした遺言者が、廃除の具体的な理由について記録に残す場合
  4.    配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「DV法」という。)に基づく保護命令の申立てをしようとする者が、申立書に申立人の供述を記載した書面の添付を要する場合(後のQ7、Q9参照)
  5.    重要な目撃証言等で、証言予定者の記憶の鮮明なうちに証拠を残しておく必要がある場合
  6.    供述者が高齢または重病のため、法廷で証言する前に死亡する可能性が高い場合
  7.    現在は供述者の協力が得られるが、将来、協力を得ることが困難となることが予想される場合
  8.    相手方の働き掛け等により、供述者が後に供述内容をくつがえすおそれがある場合

Q4. 上記Q3以外に、宣誓認証制度を利用できる場合はありませんか?

   尊厳死宣言書について宣誓認証をする場合や、企業の創業者が子孫や後継者に残す社訓として宣誓認証する場合等にも活用できると思います。
   宣誓認証は、我が国では比較的新しい制度ですから、実際に社会で活躍され、苦労されている方々のアイディア、創意工夫により、様々な利用が可能な制度です。是非お近くの公証役場にご相談ください。

宣誓認証の対象文書

Q5. 宣誓認証の対象となる文書は、どのようなものですか?

   宣誓は、証書の記載が真実であることを誓うものですから、認証を与える私署証書は、過去の事実を記載した内容のものが一般的です。しかし、契約書等証書の作成者の意思表示を記載した私署証書も含まれます。

宣誓認証の手続

Q6. 宣誓認証の手続は、どのようなものですか。一般の私署証書とどのような点が異なるのでしょうか?

   宣誓認証は、認証を受けようとする私署証書を作成した人(嘱託人)自身が、公証人の面前で宣誓することが必要とされており、代理人による嘱託は認められません(公証人法58条ノ2第1項、第3項)。
   また、宣誓認証の嘱託をするには、同一内容の証書を2通提出しなければなりません(公証人法58条ノ2第2項)。手続終了後、公証人が認証した証書の1通を嘱託人に還付し、1通を公証役場で保存するためです。
   これらの点が、一般の私署証書の認証と異なります。
   公証人は、宣誓の趣旨を説明し、証書の記載が虚偽であることを知って宣誓したときは過料の制裁のあることを告げます(公証人法施行規則13条の3第3項)。その後、嘱託人が、公証人の面前で、起立して厳粛に、「良心に従って証書の記載が真実であることを誓う」旨宣誓します(同規則13条の3第2項)。

DV法における宣誓供述書の利用

Q7. 配偶者からの暴力の被害者が保護を受ける手続をとるときに、宣誓供述書が必要になる場合があると聞きましたが、どういうことですか?

   DV法に基づく保護命令の申立てをするときに、「身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況」などを記載した書面を提出しなければならず、宣誓供述書を添付しなければならない場合があります(後記Q9参照)。

保護命令

Q8. 保護命令とは、何ですか?

   保護命令とは、裁判所が被害者からの申立てにより、その生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、その生命または身体に危害が加えられること防止するため、配偶者に対して一定の期間被害者へのつきまといの禁止等や住居からの退去を命じ、配偶者がその命令に違反すると刑罰が科せられる制度です。

Q9. 保護命令の申立てにおいて宣誓供述書が必要になる場合とは、どのような場合ですか?

   保護命令の申立ては、次の①ないし③の事実を記載した書面で行わなければならないと定められています(DV法12条1項)。

  1. 配偶者から暴力または脅迫を受けた状況
  2. 配偶者からの更なる暴力または脅迫により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる事情
  3. 配偶者暴力相談支援センターの職員または警察職員に対し、配偶者からの暴力に関して相談し、または援助もしくは保護を求めた事実の有無等
  4.    しかし、申立書に③の事実の記載のないときは、①の状況および②の事情についての申立人の供述を記載した書面に、公証人の宣誓認証を受けたものを添付しなければならないものとされています(同条2項)。
       再度の保護命令の申立て(住居からの退去等を求める保護命令に限りすることができる。)も、同様に、上記③の事実の記載がないときは、申立書に①②の事情および再度の申立てを必要とする事情についての申立人の供述を記載した書面に、公証人の宣誓認証を受けたものを添付しなければなりません(DV法18条2項)。
       したがって、上記の各場合には、宣誓認証を受ける必要があります。