公証事務
9-1私署証書の認証
私署証書の意義
Q1. 「私署証書」とは、どのようなものですか?
私署証書とは、作成者の署名(署名押印)または記名押印のある私文書のことです。
なお、私文書とは、公文書(省庁その他の公務所または公務員が職務上作成した文書)以外の、個人や会社が作成した文書等のことです。
(注)外国語で作成された私書証書に対する認証については、「外国文認証」の項を参照してください。
認証の意義
Q2. 公証人の行う私署証書の「認証」とは、何ですか?
私文書の成立の真正を証明するため、私文書にされた署名(署名押印)または記名押印(押印)が本人のものであることを、公証人が証明することです。
私文書であっても、作成者の署名(署名押印)または記名押印のないものは、認証の対象とはなりません。
認証の効果
Q3. 私署証書が認証されることには、どのような効果があるのですか?
その文書が真正に成立したこと、すなわち、文書が作成名義人の意思に基づいて作成されたことが推定されます。
認証の対象
Q4. 公文書は、認証の対象にならないのですか?
公文書(省庁その他の公務所または公務員が職務上作成した文書)は、認証の対象にはなりません。
Q5. 私署証書なら何でも認証してもらえるのですか?
法律効果に全く影響のない、単なる自然現象や史実を記載した文書は認証の対象なりませんが、法律効果に直接間接に影響のある事実が記載されている文書であれば、認証の対象になります。
Q6. 写真や図面はどうですか?
認証の対象は文書であることを要するので、文字またはこれに代わる符号によって思想を表明したものであることを要し、写真や図面そのものは、認証の対象になりません。ただし、写真等を説明の補助手段とする文書は、認証の対象となります。
認証の種類
Q7. 署名の真正の確認は、どのようにして行うのですか?
次の三つの方法があります。
- 当事者が公証人の面前で、私署証書に署名(署名押印)または記名押印をする方法(目撃認証、面前認証)
- 当事者が公証人の面前で、私署証書の署名、署名押印または記名押印が自らしたものであることを自認する方法(自認認証)
- 代理人が公証人の面前で、私署証書の署名、署名押印または記名押印が本人のものであることを自認する方法(代理自認、代理認証)
謄本認証
Q8. 謄本の認証もできますか?
認証できます。嘱託人が提出した私署証書の謄本が、その原本と対照して符合する場合、公証人がその謄本が原本と符合する旨を認証します。
したがって、同じく認証といっても、今まで述べてきた署名(署名押印)または記名押印(ひいては文書)の成立の真正を認証する署名認証とは、その性質が異なります。
証書内容の審査
Q9. 公証人は、文書の内容を審査するのですか?
審査をします。この文書内容の審査の機能こそが、公証人以外の他の機関における単なる署名認証とは異なる点で、公証人による認証の重要性を基礎づける要点となっています。
Q10. どのような観点から審査するのですか?
公証人の行う認証の効力は、その文書の成立の真正を証明するにとどまり、内容の真実性や正確性を証明するわけではありません。内容の真実性や正確性ではなく、公証人は、公証人法26条の規定により、文書の内容が違法、無効等なものでないかどうかという観点からの審査をしなければならず、法令に違反した事項や無効な法律行為等の記載がないかどうかを審査するというものです。
そして、公証人は、違法、無効等の事由があるとの具体的な疑いがあれば、関係人に注意をし、必要な説明をさせなければなりません(公証人法施行規則13条参照)。違法、無効な文書に公証人が認証を与えることにより、その文書が適法、有効な文書であるかのような外観を呈することとなり、悪用される危険を防ぐためです。その結果、違法、無効等の事由が明白になれば、認証を与えることはできません。
訂正や空欄がある文書の認証
Q11. 認証の対象になる文書に、文字の訂正や空欄があっても認証してもらえますか?
文字の訂正等があるときは、その状況を認証文に記載します。ですから、少々の訂正等は構いませんが、あまり多いときは書き直した方がよいでしょう。
また、文書に空欄があるときは、嘱託人に空欄に斜線を引いてもらうか、または認証文中に、空欄がある旨を具体的に指摘(表示)しておくことになります。認証後に加筆変更されては認証の意義が少なからず失われることになるからです。白紙委任状の場合には、認証文に、委任状のうちのある部分の記載を欠き空白である旨を表示します。