お知らせ
奥尻島における広報活動
平成29年8月 北海道公証人会
1 奥尻島の現況
⑴ 位置と概要
奥尻島は、北海道の南西端に位置し、江差町の西北約61㎞・せたな町の南西約42㎞の日本海に浮かぶ離島である。島名は、アイヌ語の「向こうの島」を意味する「イク・シリ」が由来とされている。奥尻島の形状は、東西11㎞、南北27㎞の南北に長い台形状の島で、道内では利尻島に次ぐ142.98㎢の面積を有する。同島の全域は花崗岩の段丘で形成され、その段丘を横切って河川が流れるため滝が多い地形となっており、その複雑な海岸線は海の幸の宝庫である。
奥尻島
奥尻島は、平成5年7月12日「北海道南西沖地震」による大津波・火災・土砂崩れ等により甚大な被害を受けたが、全国からの支援と全町民の尽力により、わずか5年後の平成10年に「完全復興宣言」をするに至っている。
奥尻町の住民人口は、昭和35年の7,908人をピークに年々減少し、平成29年7月末現在2,749人であり、65歳以上の高齢者の割合は平成27年現在37.7%と全国平均26.6%を大きく上回っている。
⑵ 公証役場へのアクセス等
奥尻島から住民が函館地方法務局函館公証役場へ行くには、1日1往復ある奥尻空港・函館空港間の航空機(約30分)を利用するか、又は1日2往復のフェリーに乗船して奥尻港から江差港まで行き(約2時間10分)、同港から函館駅前まで都市間バス(約2時間17分)を利用するのが主な方法である。
なお、航空機、フェリーのいずれも便数の少なさに加え、悪天候が原因で欠航となることが珍しくなく、交通の便は非常に悪い実情にある。
奥尻町役場周辺
2 奥尻島における広報活動
⑴ 広報活動実施の経緯
平成26年以降、函館公証役場管内においては遺言公正証書及び任意後見契約公正証書の作成件数が増加傾向にあるにもかかわらず、奥尻町民による同公正証書の作成実績が全くない状況が続いている。その原因として、北海道公証人会としての広報活動の不足が考えられることから、当会の広報活動として講演会及び相談会を実施することとした。
⑵ 事前準備等
北海道公証人会では、函館公証人会と協議の上、次の日程等により講演会及び相談会を実施することとした。
ア 講演会
演 題 | 「知って安心、遺言・任意後見契約」 |
日 時 | 8月23日(水)午後2時~2時50分 |
イ 相談会
日 時 | 8月23日(水)午後3時~5時 |
8月24日(木)午前9時~11時 |
ウ 会 場 奥尻町海洋研修センター会議室
エ 講師・相談員 函館公証人
海洋研修センター
講演会・相談会開催の奥尻町民に対する周知については、奥尻町広報誌への掲載のほか、函館公証人会において「函館公証人会による講演会・無料相談会」と題するチラシを作成し、これを奥尻町役場の協力を得て、町内全戸に配布した。
3 広報活動の状況
⑴ 講演会の状況
8月23日午後2時に開場したところ、前日までの予約者数を上回る15名の方々が聴講に訪れた。内訳は、一般の町民が約半数、役場の福祉担当職員と民生委員が残り半数であった。遺言と任意後見契約についてパワーポイントでイラストを示しながら説明したところ、「遺言で譲るとした財産を使ってもいいのか。」、「遺言公正証書の作成手数料はいくらか。」、「遺留分を主張されないためにはどのような遺言にすればいいのか。」など多数の質問が寄せられたことから、関心の高さがうかがわれた。
⑵ 相談会の状況
8月23日午後3時から5時まで及び24日午前9時から11時までの2日間にわたり相談会を開設したが、相談者は遺言について相談をしたい旨事前に連絡のあった1名のみであった。今後、遺言公正証書を作成したいとのことであった。
4 今後の課題
奥尻島は高齢者の比率が高いことから、遺言及び任意後見契約の潜在的なニーズは相当程度あるものと推測されるが、それが公正証書の作成実績につながっていないのは、公証制度が高齢者の抱えている悩みを解決する手段の一つとして十分に認識されていないことが考えられる。
今回、奥尻島において初めて広報活動を実施したが、公証制度の定着を図るためには、対象地域を変えながら繰り返し広報活動を実施していく必要があるものと考える。